Locotory | Relux広報ブログ

一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」の広報ブログです。

【Reluxカンファレンス2018】ホテルトレンド最前線、愛されるホテルになるためには従業員の幸せと自信が不可欠。

全7回の連載でお届けする「Reluxカンファレンス2018」のレポート。第4回は、「ホテルの顧客サービスの最前線〜ネクスト・ラグジュアリーの定義は何か〜」の様子を前編と後編に分けてお届けいたします。

 

登壇者    東京ステーションホテル 常務取締役 総支配人 藤崎 斉 氏

       ハレクラニ沖縄 総支配人 吉江 潤 氏

       ホテル雅叙園 東京 代表取締役社長 本中野 真 氏

モデレーター 株式会社Loco Partners 取締役 塩川 一樹

 

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共感できる瞬間の創出こそサービスの原点

塩川 一樹(以下、塩川)—本日は、お越しいただきありがとうございます。早速ですが、本日のテーマについてお話いたします。「ネクストラグジュアリーの定義」をテーマに掲げたのですが、「お客さまに対する取り組みや考え方」と「それを司る人の部分」の2点が大きなポイントであると考えています。そこで、まずはお三方にお客さまに対する取り組みや考え方の部分をお伺いします。では、藤崎さんからお願いできますでしょうか。

 

藤崎 斉 氏(以下、藤崎 氏)—2012年10月3日に東京ステーションホテルを再開業してから5年目になりますが、その時から変わっていないことがあります。それは、スタッフへ「サービスをしてはいけない」と伝え続けていることです。

宿泊というかけがえのないアセットを預かっているわけですが、かけがえのないホテルで私たちは「サービスを提供」してはいけません。その代わりに「お客さまと共感することを大切にしましょう」といつも言っています。つまり、私たちのサービスやスタイルがあって、それに対価をいただくのではなく、「お客さまと共感できる瞬間を積み上げた」結果として対価をいただくということを大切にしている次第です。これこそが顧客サービスの原点であり、最終的にはラグジュアリーの思想につながっていくと考えています。

 

塩川—ありがとうございます。つまり、「何かをして差しあげる」のではなく「相手の脳裏に浮かんでいることに共感する」ことが、おもてなしということでしょうか。

 

藤崎氏—そうですね。あまり難しく考えてはいませんが、ホスピタリティコンサルタントの方がよくおっしゃるような目配り・気配り・心配りではなく、人として誰しもが持っている気持ちを大切にすれば良いと常日頃より言っています。そのため、そこにあまり決まりはなく、本人の良さや常識に任せてお客さまに向き合っているというのが現状です。

 

塩川—素直にお客さまに向き合うというシンプルさを大切にされているのですね。

 

藤崎氏—はい。また採用の時もスキルなどのプロファイリングはもちろん見ますが、それよりも「どうしてわざわざ東京ステーションホテルで働きたいのか」ということを何よりも大切にしていますし、今後も判断基準にしていきたいと考えています。そのため、私たちはスキルよりも想いを大切にして、スタッフを採用しています。

 

塩川―ありがとうございます。吉江さんはいかがでしょうか。

 

支持されるために大切なことは従業員の幸せ

吉江 潤 氏(以下、吉江 氏)―私の場合は、2019年に向けてハレクラニ沖縄の開業の準備をしています。準備といっても、まだホテルの人間は私と人事部長と営業責任者の3人だけなので、三井不動産の方々と日々仕事をしています。

私は「お客さまではなくハレクラニ沖縄で働くすべての従業員、そしてホテルに関わるすべてのパートナー企業の方と仕事をすることに喜びを感じ、誇りを持ち、働きがいのあるホテル」を作りたいと三井不動産の方々へ話して、理想のホテル像に賛同いただき今に至ります。なぜそういうことを言ったのかというと、やはり働いている人がハッピーでないと、お客さまもハッピーにできないという単純な方程式に基づいています。これは私がザ・リッツ・カールトン 沖縄での10年間を通じて一番大事だと思ったことで、それをいま実現しようと思っています。

 

塩川―ありがとうございます。これはお客さまに対する前に、人のあるべき姿のお話ともいえますね。次に本中野さん、お客さまに対するサービスの考え方や大切にしていることについて、ご紹介いただけますでしょうか。

 

本中野 真 氏(以下、本中野 氏)―私どもが常に考えていることは、どうしたらもう一度来ていただけるかということです。単発的なステイに終わるのではなく、生涯顧客としてお客さまを捉えて、どうお付き合いさせていただくかをきちっと事業の中に入れ込みたいと思っています。そのため、期待度に沿う満足度を提供できるかというのが一番重要であると顧客サービスについては考えています。ホテル雅叙園 東京は今年でちょうど90周年になり、創業者 細川力蔵の想いをどう伝えていくかということも非常に重要な時期になっています。そこで、キャッチコピーに「大切な人と特別な場所。伝えたくなる非日常。」を掲げ、来ていただいた方に「もう一度来たい」「こんなホテルがよかった」と思っていただけるような施設になりたいと考えています。

 

塩川―お客さまに施設のフィロソフィーを伝えて、また期待値を上回り続けることでリピートいただいているわけですね。

 

本中野 氏―そうですね、基本的にスタッフが自社に自信と誇りを持って伝え、伝承していったとき、そういう想いがお客さまに伝わっていくと信じています。

 

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塩川―ありがとうございます。ここから少し各論に進ませていただき、取り組みや仕組みについてお聞かせください。お客さまに気持ちを届けたり、ご満足いただくための取り組みにおいて、成功や失敗どちらでも構わないのですが事例があれば教えてください。

 

サービスは満足ではなく感動を最優先に

吉江 氏―当然ながら経営の理念やビジョン・ミッションをきちんと社内へ浸透させるところからスタートする、これこそが一番重要なことだと思います。

 

塩川―弊社も同じく、ミッションとビジョン、そしてバリュー、この3つの一貫性を大事にしています。ハレクラニ沖縄さまで言うと、いまはその次の仕組みをつくっていく段階かなと思うのですが、いかがでしょうか。

 

吉江 氏 —そうですね、何度も申し上げて恐縮ですが、私はザ・リッツ・カールトン沖縄の仕組みの良い所は取り入れていきたいと考えています。反対に、昨年マリオット・インターナショナルと一緒になり、世界最大級のホテルグループの仲間入りをしたので、ザ・リッツ・カールトンの中でもグループとして規制が多く出てきました。そのため、ザ・リッツ・カールトン沖縄で実現できなかったことは、積極的にハレクラニ沖縄で実現していこうと思っています。

その1つが、先ほどもお話したように、ホテルの主役は現場でお客さまに接する人たちであるということです。私たち総支配人や管理職はいかに現場をサポートし、ガイドをして任せるかということが役目になるでしょう。これもザ・リッツ・カールトン独特の仕組みで、一人ひとりの働きに権限を渡し、目の前のお客さまに感動していただけると分かった時点で、本人の判断に基づき特別なことをして良いという仕組みです。これは過去に働いた外資ラグジュアリーチェーンにはない、ザ・リッツ・カールトンならではの仕組みだと思っています。そのため、必ずハレクラニ沖縄でも取り入れていきたいですね。そうやって自分が判断してお客さまを感動させることが本人の喜びに変わっていく。誇りになり、次のお客さまがいらした時に、またがんばろうと思うのです。つまり一人ひとりのお客さまを感動させることによって、お客さまが増えていくプラスサイクルを作り出せると考えています。

 

塩川―ありがとうございます。ちょっと深掘りしてお聞きいたします。メンバーに任せるのは、メンバーを信じるというメッセージであると思うのですが、どのぐらいの権限を任されるのでしょうか。

 

吉江 氏―今日はハレクラニ沖縄の者としてきたのですが、ザ・リッツ・カールトンのお話ばかりで申し訳ありません。ただ、私が働いてきた中でザ・リッツ・カールトンでの経験は自分にとって良い意味で衝撃だったので、もう少しザ・リッツ・カールトンで経験したこをお話しさせていただきます。ザ・リッツ・カールトンでは「成功への要因」という、全員が意識しなければならない5つの項目があり、それぞれに優先順位がついています。

優先順位が1番高いのは、お客さまを感動させること。そして2番目が、いかに従業員をエンゲージするか。3番目がお客さま。4番目が卓越した商品とサービスを提供すること。そして最後が財務です。この順番がとてもユニークであって、いくらホスピタリティーとはいえビジネスの場なので、他企業であれば5番目が最優先になってくるでしょう。しかしながら、ザ・リッツ・カールトンでは一番に感動を徹底していました。それも、満足ではなく感動をさせる。

なぜなら満足というのは、その時は良くても、いずれ忘れられてしまうからです。感動は一生記憶に残りますし、それを人にも話す。ソーシャルメディアや人づての口コミでまたお客さまが増える。だからこそ、権限の範囲でいうとすべて従業員の判断に任せていました。ハレクラニ沖縄でも、これは絶対に取り入れたい仕組みです。

 

塩川―満足に止まらず、その先の感動を目指すということですね。つまり、どれだけ当事者意識を持って、お客さまに望むのかということを求める環境が仕組みとしてあった、と。これは、お客さまが感動したこともまたナレッジとして貯めていき、社内で共有されていたのでしょうか。

 

吉江 氏―それも仕組みとしてありました。やはり、日本人というのは何をしてもいいよと言われてもなかなかできないところがあるようです。なので、出来るようにするためには、いろいろな例を聞かせて、見せて、本人に実践させて次につなげることが大切でした。

 

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「らしさ」の追求がサービスの質向上に

塩川―0→1は難しいとしてもケーススタディーを共有することを日常的に行って、さらに自分でアレンジを仕掛けていくということですね。ありがとうございます。では藤崎さん、何かお客さまに対するサービスや取り組み、仕掛けなどをお聞かせいただければと思うのですが、いかがでしょうか。

 

藤崎 氏—基本的には吉江さんがおっしゃっていたように、ミッションとビジョンをきちんとさせて、ステークホルダーレベルまで浸透させていく。そして、その下地として日常の行動指針をセグメントごとに決めて、オペレーションを回していくことが大切だと思います。それに加えて下から全体を支えていくという意味で、コアバリューの作成を行っています。中長期で何があっても芯の通ったホテルとして価値をお届けできるようにしたいという想いがあります。

本来であれば、コアバリューを作成するにあたり私が指揮すべきなのかもしれませんが、部署横断的にやっており、「東京ステーションホテルらしい人ってどういう人か」とイメージができる人で集まり、チームを組んで議論し、最後はトップ会議を設けて、コアバリューを定めていくという流れをとっています。それが決まれば、悩んだり、ジャッジメントをしたり、オペレーションを決めていくにあたり、常にそこにたち戻る状況が出来るでしょう。

 

塩川―これはミッション・ビジョンを基に普段の行動指針をつくり、立ち戻れる場所を明文化していくということだと思うのですが、ちょっと深掘りして伺います。私も東京ステーションホテルさまには、2度ほど宿泊させていただき、当然感動を覚えています。そして、そこに携わる方々が非常に面白く、私なりに「らしさ」を感じたのですが、東京ステーションホテルさまが目指している「らしさ」とは、どういうものでしょうか。抽象的な質問ではありますが、スタッフの方々が口にされる「どういう人が東京ステーションホテルさまらしいのか」を伺えればと思います。

 

藤崎 氏—わかりやすく言うと、ザ・リッツ・カールトンらしくない人でしょうか。「お客さまの喜びが自分の喜びになる」といった意味で、やらなければいけないことは同じです。ただザ・リッツ・カールトンはやっぱりかっこいいので、私たちはそこまで切れ味鋭いスキルを持つスタッフがそもそもいなかったというか、人はすごく良いのですが、ある意味では洗練されておらず、華やかでもない。どちらかというと地味で目立たないかもしれないけれども、気づいたらお客さまの側にいるということを大切にしています。それが展開できたときには、「こういうことが私たちらしかった」「こうやって感謝されたね」と、社内でも共有しています。

 

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塩川―すこし柔らかいというか、素朴というか、そういうニュアンスなのでしょうか。

 

藤崎 氏―すごく素朴だと思いますね。

 

塩川―ありがとうございます。では本中野さん、ホテル雅叙園東京さまの「らしさ」というのはありますでしょうか。

 

お客さま目線で行動した個人を尊重し合う組織作りを

本中野 氏―これまではビジョン・ミッション研修やトレーニングプログラムをきちんと作ることに注力しており、ようやく2年経って、事例に基づく共有を行うに至りました。アクションなどお客さまへの対応というのは十人十色の感性があるので、これをして正解というのはありません。そのため、いかに事例を共有しながら、他部署を含め社内でどうコミュニケーションを図っていくかということを大切にしています。まずはお客さまに向かう前に、従業員同士がリスペクトし合えるよう、この人はこういうことをやっていたということを共有し合うことから始めました。

 

塩川―お三方の話を伺っているとよくあるマニュアルとは異なり、「らしさ」というか、自発的にお客さまへコミュニケーションをとっていくことを大切にしているように感じるのですが、その辺はいかがでしょうか。マニュアルと個人、という関係に何かお考えをお持ちでしょうか。

 

本中野 氏―ある一定のレベルまでは、スタンダードが必要だと思うのですが、そこから先は自分自身の意志だと考えています。何かをやるときに情熱を持っていれば、アクションをするときに理解者を得られるでしょうし、自信にもつながります。そういう育ち方ができれば嬉しいですね。もちろん、ある程度はマニュアルが必要ですが、その先はやるという気持ちを大事にしていきたいですね。

 

塩川―ありがとうございます。吉江さんはいかがでしょう。

 

吉江 氏―例えば、新しいサービスや商品を作るときに決してトップダウンで物事を決めないようにしています。やはりそれぞれの部署や現場の人たちこそ、日々そこで行われていることやお客さまが感じられていることを知っているプロなので、その人たちの意見を参考にしながら良いものを作っていくことこそが社内コミュニケーションだと考えています。組織では上司と部下という上下関係ですが、人と人として考えたときには対等の立場でコミニケーションができる人間関係づくりが必要です。上下関係だと上司が部下に指示をしてそれに従うだけでは決していいものはできないし、部下もいつまでも仕事に誇りを持てず、楽しくもない。責任と自信を持たせるためにも、全ての人に発言する機会を与え、それを聞き、フィードバックするようにしています。

 

塩川―やはり自発性が必要でその方がお客さまに伝わりやすいという背景もあるのでしょうか。藤崎さんは、マニュアルとその先という関係についていかがでしょうか。

 

藤崎 氏―基本的にいえば、マニュアルはコーポレートとして最低限遵守しなければいけないものですが、最終的にはどれだけゲストやマーケットの目線でサービスができるのか、ということが大切になると考えています。これは顧客接点におけるスタッフの経験価値を最大活用するという意味で、私もあまり縛っていません。ただ、任せる時に非常にリスクが出てきてしまうのも事実です。私たちは、もともとホテルチェーンだったので、従来のやり方でやってきたスタッフもいれば、再開業に合わせて入ってきたスタッフもいたので、新旧を合わせていくことは難しいことでした。そこで任せすぎてしまうと属人的になったり、開業当初というのは起こりやすいと思うのですが、派閥争いも起こりました。

なので、最終的にはお客さま目線で行動基準を組み立てるようにしています。ただ、その時に注意しなければいけないのは、日本企業の場合あまり外に目を向けない、つまり育った環境から抜け出せいないことが多いということです。やはりホテルカンパニーとしてグローバルに展開してきたヒルトン・ホテルズ&リゾートやマリオット・インターナショナルは幅広い知識をもっているので、なぜそれが良いのかを理解した上で自分たちらしさを加えていくというプロセスが必要になるのですが、非常に難しいことでした。

 

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塩川―これはもう二元論ではないですね。なぜこのルールなのかということを掘り下げて、理解を得るなど部門間での統一がないと難しいですね。お三方のお話を伺い、それぞれが組織作りにおいて大切にされているポイントを学ばせていただきました。ありがとうございます。