Locotory | Relux広報ブログ

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【Reluxカンファレンス2018】日本屈指のリーダーが考えるホテルにおけるネクスト・ラグジュアリーの定義とは?

全7回の連載でお届けする「Reluxカンファレンス2018」のレポート。第5回は、テーマ「ホテルの顧客サービスの最前線 〜ネクスト・ラグジュアリーの定義は何か〜」の後編をお届けいたします。

 

登壇者    東京ステーションホテル 常務取締役 総支配人 藤崎 斉 氏

       ハレクラニ沖縄 総支配人 吉江 潤 氏

       ホテル雅叙園 東京 代表取締役社長 本中野 真 氏

モデレーター 株式会社Loco Partners 取締役 塩川 一樹

 

前半はこちらよりご覧いただけます。

blog.loco-partners.com

  

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塩川—ここからお客さまのトレンドについて話していきたいとおもいます。お三方から見て、最近のお客さまはどういうことを求めていらっしゃると思いますか。

 

藤崎 氏―これはみなさまと同じだと思うのですが、「モノよりコト」と言われて久しく、やはり体験や経験を大切にするトレンドが広がっているように感じます。情報が簡単に手に入る、物は便利になっていく、という状況が進めば進むほど「エクスペリエンス」という代え難いものを求めている方が多くいることを強く感じています。

 

塩川―本中野さんはいかがでしょうか。

 

本中野 氏―マーケティング理論でいろいろ学ばせていただくと、顧客の価値、顧客の利便性、コミュニケーション、コストに行き着くのですが、この中でも最も大切だと思うことはコミュニケーションです。1回の理由がどうであれ、その対応がいかに次につながるかを意識しながら、商品の開発や対応をするようにしています。そのため、社内の目線だけでなく、顧客という外の目線を持ちながら対応していくことにニーズがあると考えています。

 

塩川—これまでのキャリアで感じてきたお客さまのニーズが、徐々に変化していく瞬間を見る、そういった肌感覚ですか?

 

本中野 氏—そうですね。私たちは婚礼事業も行っており、これまで約22万組のお客さまをお手伝いしてきました。現在も、結婚式をあげたいという声は頂くのですが、なかなか選んでいただけないという状況に、何か違う角度からアプローチしなければいけないということも実感しています。

 

塩川—簡単には振り向いてくれなくなっているということですか。

 

本中野 氏—はい。ただ宿泊の場合は、記念日でご利用いただく確率が高いので、また次の記念日などいつでも帰ってきていただければ、嬉しいですね。

 

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塩川—吉江さん、お客さまのニーズ展開についていかがでしょうか?

 

求められているのは「人と人とのつながり」

吉江 氏—これはもうホテルの種類によると思います。ビジネスホテル、シティホテル、リゾートホテル、それぞれにお客さまが求めるものは違います。例えばビジネスホテルであれば、清潔で安全で機能的であればお客さまは満足します。では、ラグジュアリーの場合はどうか。今のラグジュアリートラベラーがどういうことを求めるかというと「人と人とのつながり」だと思います。もちろんそれ以前に、ハードはもちろんのこと、美しいもの、景色、音楽とか、人が五感で感じられるものを創り出して、その次に人によるサービスがきます。

いくらお料理が美味しくて、雰囲気が良くても、そこでサービスしてくれた人が良くなければ、もう一度来たいとは思わない。逆にお料理がほどほどであっても、そこでサービスをしてくれた人が素晴らしい人であれば必ず戻ってくる。

先日アメリカでラグジュアリーホテルの視察をしてきました。そのうちの1つのホテルに入っていたカジュアルなイタリアンレストランでディナーを頂きました。サービスをしてくれた方が非常にコミュニケーションに長けており、こちらが心地よいと感じるサービスを提供してくれました。それだけで、そこのホテルの印象が変わってしまったほどです。ラグジュアリートラベラーはやはり人とのつながりをより求めていると感じています。

 

塩川—人によって加点されることもあれば、減点されることもあるということですね。サービスを司る人が要となるのですね。続いて藤崎さんは、いかがでしょうか。

 

歴史をつむぐ人材育成が肝

藤崎 氏—基本的には先ほどお二方もおっしゃったように、コミュニケーションは大事ですよね。その他に、私たちが掲げているポイントはマーケットにおいて創業から100年以上も経っていることがあげられます。その歴史を絶やさぬよう働く人を育てるために、私たちでいうと総支配人の気づきをスタッフと共有する場を設けています。これは年齢に関係なく集まって話すことができ、エントリーコース、ベーシックコース、アドバンスコースとコースに分けています。そして、部門長を中心とした寺子屋的な場も設けて、何度も「自分たちは間違っていないか」と議論し、課題を解決していくようにしています。人を育てるためには、これを繰り返していくしかないと思っています。

 

塩川—ちなみに、寺子屋はどのようなテーマがあるのでしょうか。

 

藤崎 氏—毎回テーマを変えつつも、広範囲に設定しています。マーケティング概要であったり、ファイナンスであったり、人材マネジメントやレベニューマネジメントなどがありますね。また1度だけファイナンスに詳しい外部講師、といってもグローバルに展開しているホテルの代表なのですが、その方にお越しいただき、グローバルのホテルシステムなども含めて勉強会をしていただいたことがあります。最近はテーマに合わせて、各部のメンバーにプレゼンテーションをしてもらうなど、私だけが話すのではなく自発的にスタッフが発信できるよう仕組みを作っています。

 

塩川—一方通行ではなく、双方が意見を伝えられる環境作りということですね。ちなみに頻度はどれほどなのでしょうか。

 

藤崎 氏—1ヶ月に1回や3ヶ月に1回など、その時に応じてという感じです。

 

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塩川—結構パワーがかかることだと思うのですが、すごいですね。ありがとうございます。吉江さんはいかがでしょうか。今後の組織作りについて、これまでのキャリアを踏まえて教えていただければと思います。

 

人材育成で注力すべきはパーソナルなサービス力

吉江 氏—いまは、ミッションとビジョンを考えている最中でまだ定かではないのですが、「すべての人にパーソナルな思いやりを持って接する」ことを大切にしていきたいと考えています。これは上司や部下、同業他社、そしてお客さまや地元の方々など、関係するすべての方に対してです。

とにかくパーソナルな思いやりを持つことで、相手へこういう話し方をしたらどう感じるかなということを考えながら、接するようになります。これが狙いです。

 

塩川—なぜそこまでパーソナルを大事にするのでしょうか。

 

吉江 氏—人それぞれの価値観や育ってきた環境が違うからです。同じサービスを10人にした時に1人は最高と思い、感動するかもしれませんが、ある1人は不快に感じるかもしれません。なので、常日頃からコミュニケーションをパーソナルにすることで、一人ひとりにあったサービスをするように心がけています。もちろん話す内容は一緒でも、話し方や伝え方を変えるだけでパーソナルになるので、それでいいんです。

 

塩川—それは個々と向き合うということにプラスして、コミュニケーションまでをパーソナルにできるように育てているということですね。

 

吉江 氏—そうですね、それによって相手との信頼関係が築きあげられます。

 

塩川—信頼関係があってこそというのが前提でコミュニケーションの質を追求していくということですね。

 

吉江 氏—とても考えたらシンプルなのですが、やるにはやはり努力しなければできない。しかし、努力すればできるようになります。

 

塩川—お客さまをお迎えする量で見てしまうと、目の前のことにとらわれて、なかなか質にまでこだわれず、後回しになるということがあると思うのですが、その辺りも妥協しないということですね。

 

吉江 氏—100%にはできなくても、100%に近づける努力をするということに集中したいと思っています。

 

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塩川—ありがとうございます。本中野さん、メンバーとの関わりの中で大切にしていることについて、いかがでしょうか。

 

積極的なアウトプットで強い組織を

本中野 氏—いろいろな手法があると思うのですが、基本は周りを巻き込み、自らの理解者をどれだけ多く作っていくかということが成長につながると思っているので、組織作りにおいては、アウトプットをするようにメンバーには伝えています。気になっていることをとにかく早くアウトプットして、理解者を早く増やせば答えが出てくるということですね。

 

塩川—悩む前に相談して解決しようということでしょうか。

 

本中野 氏—そうですね。こんなことを考えている、という方向性は早く共有するということですね。

 

塩川—受け入れる側の早く言って欲しかったという感情もなくし、相互関係を良好にしていくのですね。ありがとうございます。ここで少し変化球を投げさせていただきますが、本中野さんから見て藤崎さん、吉江さんのリスペクトする点、あるいはここは負けないぞという点についてぜひ教えてください。

 

本中野 氏—お二人とも先輩で、私は駆け出しなので、そういう意味ではザ・リッツ・カールトンのノウハウをお持ちで海外マーケットをよく見ていらっしゃる吉江さんには全く勝てる気がしません。そして、藤崎さんは元々上司ですから、その点で宿泊のことやスモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(以下、SLH)の先輩でもあるので、いろいろと太刀打ちできる状況ではないと思っております(笑)

 

塩川—一方でここは負けない、というポイントがあればぜひ教えてください。

 

本中野 氏—意識としては生涯顧客を意識し、婚礼事業を中心としたすべてのお客さまとどのようにつながるかということは私たちの事業計画の柱でもあるので、そこだけは負けていないと考えています。

 

塩川—ありがとうございました。藤崎さんはいかがでしょうか。

 

藤崎 氏—本中野さんご自身がおっしゃったように国内のウェディングにおいて、量質ともに本中野さんの右にでる方はいらっしゃらないと思っております。ですから、ウェディングを通じて生涯顧客を作りたいというのは、私も真似させていただきたいことですね。私たちの立場的にはジェネラルにしなければなりませんが、専門領域や得意分野を持って活かすということは非常に強みであると思っています。また吉江さんに関しては、ゴルフのスコアで全く勝てないということですね(笑)あとは業界での実績です。

 

塩川—それでは、吉江さんはいかがでしょうか。

 

吉江 氏—そうですね、本中野さんの場合は人望ですね。古巣であるホテル日航東京からホテル雅叙園東京に移られた時、50人ほどついてきたと伺っています。私はこれから新オープンに向けて400人を集めなければいけないのですが、何人来てくれるかなと考えると、おそらく50人は無理なのかなと。藤崎さんは、すごく知能的な方で、特にマーケティング戦略は学ばせていただきたいなと思っています。

 

塩川—ありがとうございます。ここは負けないぞという点についてはいかがでしょうか。

 

吉江 氏—そうですね。やはりゴルフには自信があります(笑)あとは、ハレクラニ沖縄はホテルチェーンではなく、2店舗目ではありますが、言ってみれば独立系で、ゼロベースでホテルを作ることができ、さらに三井不動産という会社のサポート体制があります。これからいいホテルを作ることを後押ししてくれる環境の中におり、間違いなくいいホテルを作れると確信しています。

 

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ラグジュアリーホテル支配人が注目するホテルや旅館とは

塩川—国内屈指のビーチリゾートである恩納村にどのようなホテルを作られるのか、非常に楽しみにしています。それでは、再度視点を変えてお伺いしたいと思います。

みなさんが注目しているホテルや旅館はどちらでしょうか。そこから、お客さまに愛されるエッセンスやトレンドなどが見えてくるかなと考えています。

 

吉江 氏—ずばり、パレスホテル東京です。私は行ったことはないのですが、今すぐにでも行ってみたいホテルです。なぜならば、ご存知の方がほとんどだとは思うのですが、ビジネス雑誌「Forbes」が毎年発表するホテルランキングに3年連続でランクインしているんですね。「五つ星」「四つ星」「レコメンデーション」の3段階評価なのですが、パレスホテル東京は3年連続ランクインをしていて、さらに毎回「五つ星」を獲得している。この五つ星を獲得しているのは、パレスホテル東京の他にマンダリンオリエンタルホテルとザ・ペニンシュラ東京ですが、この2つはラグジュアリーホテルブームの火付け役なので理解できます。それにもかからず、日系の300室近い大型ホテルが、星を取るためのハードルが非常に高い「Forbes」のホテルランキングに3年連続でランクインしている。「Forbes」のラグジュアリートラベラーが求める約900項目の審査基準があって、25%はハード、75%はサービス・ソフトの部分なんですね。

五つ星を取るには約900項目の基準のうち90%以上を取らないといけない高みのところを、パレスホテル東京は3年連続でとっている。ぜひ、その中身が知りたいなというところです。

 

塩川—続いて本中野さんいかがでしょうか。

 

本中野 氏—伊勢にあるアマネムです。次の事業を考えた時にやっぱり温泉の事業はいいなと思っていて、どのように成功されているかを知りたかったので。ただ、本日伺った西陣織 細尾さんのお話から、本物の仕上げ、要するに表面だけでなくプロセスを分解して作っていらっしゃるということにも惹かれました。なので、HOSOO RESIDENCEにも一度お伺いしてみたいですね。

 

塩川—藤崎さんはいかがでしょうか。

 

藤崎 氏—奈良県の奈良ホテルですね。

 

塩川—これはいつもお譲りにならないですね。

 

藤崎 氏—理由の1つは同じJR ホテルグループということですね。こちらは西日本ですが。そしてもう1つ、昨年度「日本クラシックホテルの会」を立ち上げたのです。戦前に開業し、建物が現存していて、営業方針が変わらない、伝える価値を持っているなど、いくつかのハードルをクリアしたホテルが集結しました。奈良ホテルは日本の旅行の価値を後世に伝えることから「西の迎賓館」と言われていましたし、東京ステーションホテルの駅舎を設計した辰野金吾という建築家が奈良ホテルも手がけているということもあり、おすすめしたいですね。旅館でいうと、本日会場にもいらっしゃる宮城県にある時音の宿 湯主一篠さんですね。マーケティングからホームページの作り方まで、とても勉強になるものが多く、ぜひ一度お邪魔したい一軒ですね。

 

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塩川—ありがとうございます。かなりエッセンスが出てきたと思うのですが、最後にお三方が考えられるネクスト・ラグジュアリーの定義について、教えていただきたいと思います。

 

それぞれが考える「ネクスト・ラグジュアリー」の定義

本中野 氏—最後は人だと思うので、当然コミュニケーションを取れるかということが大事だと思います。サービスの質でお客さまの滞在が変わるので、一人ひとりがどうやってお客さまのスペースにカットインして入っていけるかが重要になると思います。

日本人はそこが1番苦手なところで、お客さまの食事が終わったらお会計を持っていってしまうと。なぜそこでデザートやコーヒーの提案をしないのか、とミステリーショッパーで厳しいお言葉を頂いたこともあります。やはり、そういった一歩踏み込んだサービスができることがラグジュアリーサービスだと考えています。

 

塩川—接客サービスにプラスαでどうしたらいいかという話ですね。

 

吉江 氏—私も何度も言っているように人ですね。特にパーソナルなサービスが大事で、ホテルの人たちがお客さまのことを認知して、パーソナルな対応をしてくれたか否かによって、お客さまが来年もここに来たいと思うかが決まります。

ハードの部分は、お客さまのニーズが変わっていくので常に新しいものを商品開発していかなけれいけませんし、ホテルは時が経てば老朽化していきます。なので、ハードの部分もきちんとメンテナンスしなければいけないのですが、それ以上にラグジュアリーが演出する五感への訴えというのは人によって創られると考えています。

 

塩川—パーソナルなところと五感に響くサービスの提供が大切ということですね。ありがとうございます。藤崎さんはいかがでしょうか。

 

藤崎 氏—私たちが参加しているSLHにて、先日学会が開かれたのですが、そこでもまさに同じテーマで議論をしていました。そこで話していたことはLuxury needs emotional engagement. つまりHuman connectivityが大切で、今後はそこに行き着くと考えています。ただ先ほども出たようにハードも大切で、そこにあるストーリーを伝えることができなければ作成側の自己満足で終わってしまい、なぜそこに価値があるのかを理解してもらえません。そのため、ハードに隠れているストーリーをオープンにしていくことが今後、価値あるサービスとして認知いただくために大切だと考えています。

 

塩川—世界の基準で見てもエモーショナルやパーソナルということを大切にしており、さらにはハードの質にまでこだわっている、そしてハードが作られるストーリーにまで共感してつくっていくことがネクスト・ラグジュアリーの定義ということですね。ありがとうございました。