Locotory | Relux広報ブログ

一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」の広報ブログです。

【Reluxカンファレンス2018】リピーターの絶えない旅館、その秘訣はパーソナルな接客にあり。

全7回の連載でお届けする「Reluxカンファレンス2018」のレポート。最終回となる今回は、テーマ「これから先も選ばれる旅館創り、あり方について」の後編をお届けします。

 

登壇者

食べるお宿 浜の湯 代表取締役社長 鈴木 良成 氏

時音の宿 湯主一條 第20代目当主 一條 一平 氏       

金谷ホテル観光株式会社 代表取締役社長 金谷 譲児 氏

 

モデレーター

株式会社Loco Partners 取締役 塩川 一樹

 

※前編はこちら

blog.loco-partners.com

 

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塩川—それでは、残り時間も少ないため次の質問に移らせていただきたいと思います。先ほども少し出てきた顧客カルテについてです。金谷さんのところでは、もう30年ほど前からつけていらっしゃると伺いました。

 

快適な宿泊環境を創りだす顧客カルテ

金谷 氏—そうですね、もう30年も前になりますね。

 

塩川—最近はデータ化されているようですが、データ化したからこそ見えたものはありますか。

 

金谷 氏—データ化しつつも、アナログを大切にするようになったということでしょうか。料理を召し上がるスピードに合わせたり、好き嫌いに合わせた調理をしたりなど、そういう一歩踏み込んだ対応ができるようになったかなと。

 

塩川—ありがとうございます。それでは、一條さんにもお伺いしたいと思います。お客さまの旅前と旅中において、どのように顧客情報を管理し、対応されているのでしょうか。

 

一條 氏—基本的には、ご予約を頂いたいた後にお送りするメールでお伺いしています。目的がなくて泊まりにいらっしゃるお客さまは少なく、記念日でご利用いただける機会が多くあります。

メールであったとしても、宿泊予約サイトを経由して予約された場合は、自動返信メールが入っているはずなのですが、ほとんど見ていらっしゃらない。

そのため、私たちはご予約を頂いたら、すべてのお客さまにメールで連絡し、それでもご返信を頂けない場合はお電話でこちらから質問するようにしています。

そして、得た情報を社内ミーティングで共有し、チェックイン対応に出かけます。チェックインが始まると、その日のお客さまのコンディションや追加でNGなこと、お子さまの名前などがはっきりとわかってくるのです。それを担当者は徹底的に頭にインプットして、接客に臨みます。

夕食が終わった時点で自分が担当したお客さまについて気がついたことをすべて顧客カルテに書き込み、翌日は朝食が始まる7時20分前に厨房スタッフも含めて全員が集まり、「この方は昨日こうでした」や「ちょっと奥さまの具合が悪そうで、昨日〇〇を残していました」など共有をします。

そうしてお客さまに快適な環境で滞在を楽しんでいただき、チェックアウトをしていただけるようにしています。

 

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塩川—旅前と旅中とで失点しないことが、加点になるという考え方ですね。ありがとうございます。

では、前回のReluxカンファレンスでも少しアナログの顧客カルテについてお話いただいた鈴木さんに改めてその辺りを教えていただきたいと思います。

 

鈴木 氏—そうですね。私たちも苦手な食材や利用シーンなどを顧客カルテに記入しています。また、それとは全く異なった観点も大切にしていて、例えばご夫婦でお泊りに来られたお客さまが交わした会話の内容にも目を向けています。

特別なことをするための情報ではなくて、他愛もない情報にも注目するのです。そうすると、2回目のご宿泊時に、同じスタッフが対応することが多いのですが、ご主人や奥さまの会話がスムーズに進まない時、前回の会話から少し内容をかいつまんで、何気なく話題として振ってみる。すると、2人の態度が変わって、スムーズな会話が出来るようになったりするのです。こういう他愛もないところも全て顧客カルテに書けるように、フリースタイルで書いてもらうようにしています。

あと何度も泊まっているお客さまに対しても、前回は「うにが苦手」と伺っていたけれど、今回も適用した方がいいのか、ということを予約係に必ず確認してもらいます。「前回このようにしましたが、今回もそのようにご準備させていただいて、よろしいでしょうか」などの確認を通じて、当日のミスがないようにしています。

 

カスタマー接点を最大化する顧客カルテ

一條 氏—ここで私からお2人にお伺いしたいのですが、私どもの場合、2回目のご宿泊の際には1回目と同じスタッフが担当するようにしています。その方が会話が成り立ちやすいからです。ただ初めてのお客さまだと、お子様がいるなどの情報はわかりつつも、なかなか判断は難しいなと感じているのですが、どのように決めていらっしゃいますか。

 

金谷 氏—やはり事前に読める情報に応じてアサインしていますね。そして、1泊2日という時間において途中で変えるということもしていません。

 

鈴木 氏—担当する係の決め方ですか。例えば、初めてのお客さまには、成長という観点からも新卒で入社した20代のスタッフをアサインしています。男性もいるし女性もいるし、それぞれ全国から来てるので、北海道から沖縄まで出身地が異なっています。

そのため、お客さまの出身地をお伺いできれば、なるべくスタッフは同じ出身地のものを担当に当てています。そして、2回目の場合は、前回担当したスタッフの評価がやや良い以上であれば同じスタッフをつけますが、そのやや良いが2回連続だった場合はそのお客さまにとって価値がなかったことになるので、3回目からは違うスタッフをつけることにしています。

 

塩川—初回でいかにお客さまとスタッフの共通点を見つけるかということですね。前回のReluxカンファレンスの際に、顧客カルテを作るだけではなく、環境も大切だと伺いましたが、それはどういうことでしょうか。

 

鈴木 氏—インターネットの宿泊予約サイトで口コミを書かれていたお客さまについては、その口コミ内容なども顧客カルテに書き込んでいます。また、宿泊後には館内でアンケートも書いていただいているので、何年何月何日にそれを書いてもらったのかも含めて保管しています。それをスタッフであればみんな閲覧できるので、予約係はそれをみながらお客さまとお話しさせていただいています。

特に担当のスタッフには、顧客カルテの内容を徹底的に覚えて、1泊2日という大切な時間をどのような接客でおもてなしするかというストーリーを自ら考えてもらっています。誰かに言われてやるのでは無く、自分がこうしたいと思った時に主体的に接客をできることが一人一人のやりがいにつながるので、そういった環境作りはとても大切にしています。

 

塩川—お話を伺って、ホテルセッションでも話題になった「パーソナルな接客」が非常にみなさまにとっても大きいと感じたのですが、そのパーソナルな接客がお客さまにも伝わっていると実感できる機会はございますか。

 

パーソナルな接客で心をつかむ

一條 氏—そうですね、やはりお客さまのくせを理解しているので、私たちは聞かずに行動をすることができる、ということでしょうか。あとは、ことば遣いですね。お客さまのことばを理解しているからこそ、お客さまも私たちに言えば安心ということが多くあります。時々「違う宿に行ったみたけれど、やっぱりここが良くて戻って来た」とおっしゃられるお客さまもいらっしゃいます。そして、「いつもありがとう」と。そういう時にパーソナルな接客の効果を実感することはあります。

 

塩川—自分のことを知ってくれている安心感が、お客さまにとっては心地よいということですね。

 

一條 氏—旅行って時間とお金をかけてするものですよね。それに対して、どれだけの接客が受けられるかというのが、お客さまの期待としてあります。つまり接客によって大きく左右される体験なので、お客さまは心地よい方がやはりいいでしょうね。

 

塩川—そうですね。金谷さんの場合はいかがでしょうか。

 

金谷 氏—私たちはお食事をロビーラウンジでお出しすることもあるため、お客さまとカジュアルにラウンジでお話しすることが多くあります。そのためか、お客さまより他の宿の情報をよくお伺いすることがあります。「先日、〇〇という宿に行ってきて、こうだったよ」など。

 

塩川—わざわざですか。

 

金谷 氏—はい、それだけ信頼していただいているというか、お寛ぎいただけている証拠なのだと思っています。

 

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塩川—ありがとうございます。鈴木さんはいかがですか。接客時のお客さまの感情はどのように捉えていますでしょうか。

 

鈴木 氏—私たちの場合は、先ほど申し上げた顧客カルテを作り始めたのが今から16、7年前になります。それまでは団体旅行を多く受け入れていた旅館でした。しかし、このままだと生き残れないと私自身もわかっており、業界からも言われていました。

そこで、違う方向に進むように切り替えていこうと思い、設備投資を個人客向けに切り替えました。それ以来、団体が一切眼中にない設備投資をずっとやってきましたね。

その中で、2002年頃に露天風呂付き客室を8室作りました。当時は伊豆半島で露天風呂付き客室を持っている旅館が無かったからこそ、ものすごく脚光を浴びましたね。年間稼働なんて、8室合計で98.5、6%という。ほぼ毎日が満室状態でした。

ただし、いくら毎日満室であっても、サービスが追いつかなければ、間違いなくお客さまは戻ってこないとわかっていたので、サービスも高品質にすべく器量のあるスタッフを中心にしっかりと採用し、旅館らしいサービス提供を徹底しました。その積み重ねが、リピーターの獲得につながったと思っています。

1990年代の後半ぐらいから、均一化とか統一化とか、「全てのお客さまに平等でないとだめだ」と言われていましたが、私たちが舵を大きく切った時代は、1対1のアプローチをするパーソナルなサービスが求められるようになっていました。それこそ、私たちのような担当制の旅館にとっては、一番強みを発揮できるような時代でした。2回目にご宿泊される際には、1回目の情報を基にしてパーソナルなサービスを提供。3回目にご宿泊される方には、2回目に得た新たな情報を利用して、そのパーソナルサービスを増やしていっています。

ですから、来館回数が増えれば増えるほど、そのお客さまにしかしてあげられないパーソナルなサービスも増えていくのです。

大体1年に1回いらっしゃるリピーターの方が、4回目や5回目で他の宿にご宿泊されても、今までうちで受けていたパーソナルなサービスが心地よくなっているんですね。例えば、1人で5枚のバスタオルを使うお客さまには、浜の湯だと最初から5枚用意していることが当たり前です。その他にも、浴衣は何枚なければこのお客さまは我慢できないとか、歯ブラシの本数は何本なければこのお客さまはダメとか、そういったことをすべて顧客カルテに書き込み、こと細やかに対応しています。

こうしていろいろな部分でパーソナルな対応を増やしていけば行くほど、他の宿にいっても戻って来てもらえるのです。浜の湯では言わなくても出てきたものが、どこどこへ行くと言わなければ出てこないし、下手したら有料だった。だから、やっぱり浜の湯だな、と。

 

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塩川—ありがとうございます。パーソナルなサービスにすることによって、よりお客さまとの関係が深くなっていくのですね。

もう時間もわずかになってしまいましたので、最後に2つだけお伺いしたいと思っています。未来に対する野望と生まれ変わっても旅館をやりたいかという質問です。それでは一條さんよりお願いできますか。

 

一條 氏—私は、父からもらった一言がもの凄く脳裏に焼きついております。「鎌先の中で将来のことを考えろ。未来のことを考えられるのは、一條家であり、お前がリーダーとしてしっかりやっていけ」と。

私どもの旅館がある鎌先に行きたい理由を作る。リゾートとは異なった居心地のいい場所を作ってあげることが私の役目だと思っています。

よく言われました。同級生とかに「旅館の息子だから大変だよな」って。でも全く大変ではありあせん。自分の将来が決まっていることは、中々ないじゃないですか。私も最初は大変なのかと思っていましたが、自分の動きはもう決まっていて、その目標にどうアプローチしていくかを自分で決定することができるので、自由な面も多くあります。そして、もちろん旅館の息子として、宿屋の主として、また旅館をやりたいですね。

 

塩川—一條さん、ありがとうございました。それでは、金谷さんお願いします。

 

金谷 氏—野望ではないのですが、やりたいことは「金谷」というブランドを旅館だけではなく、物販の領域などでも強化していきたいと思っています。そして、生まれ変わったらですが、旅館をやりたいというよりもサービス業に携わり続けたいと思っています。

 

塩川—ありがとうございます。鈴木さん、最後にお聞かせ下さい。

 

鈴木 氏—そうですね。大それた野望は持ち合わせていないのですが、旅館が大好きなので、これからも旅館文化を守っていきたいですね。後世にまで残る旅館とその文化を継承していきたいな、と。

いま旅館のあり方もいろいろになってきているので、その中で浜の湯のスタイルが良いお手本になれるよう努力して、このスタイルを貫く旅館を1軒でも増やしていけたらうれしいです。

また旅館経営がしたいかどうかというのは、旅館が好きだからこそ、また生まれ変わっても絶対に旅館をやりたいと考えています。私は本当に、旅館ほどいい商売は無いと思います。ここにいるお二方と一緒に少しでも旅館業界を盛り上げていきたいですね。

 

塩川—鈴木さん、ありがとうございます。これにて、セッションを終わりにさせていただきます。お三方の想いが継承されていくことを切に願っております。また、私自身も旅行業界に携わる当事者として旅館文化を大切に守り、繁栄に寄与していきたいと思います。

本日は、どうもありがとうございました。